きなこのブログ

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習近平 国家主席の異例の3期目入り 2 ~習近平の「毛沢東ごっこ」~

習近平独裁強化の背景
https://tanakanews.com/221027china.htm

中国で、権力者の習近平が、自らの独裁権力をさらに強めている。

 

独裁政党である中国共産党は、1970年代に毛沢東の個人独裁体制が崩れてトウ小平が権力に就いてから、2012年に胡錦涛トウ小平の最後の弟子)が権力を降りて習近平と交代するまで、覇権国である米国から工業技術や資本を供給されて米製造業の下請けとして経済発展させてもらう見返りとして、共産党上層部内だけの)民主主義や、リベラル主義(少しの言論の自由)、市場主義(資本主義。改革開放路線)など、米国に気に入られようとする政治経済体制を採用・演出していた。

 

1970年代末から2012年まで、共産党は党内民主主義を重視して党上層部が合議制の集団指導体制を採用し、個人の独裁が禁じられていた。

 

権力者の任期も2期10年に定められていた。

 

だが、2012年に権力の座についた習近平は、これらのトウ小平路線を次々と壊し、個人独裁を強化している。 

 

 

 

習近平は先日の党大会で、権力者(党書記、国家主席、党軍事委主席という3職を兼務する者)として3期目に入ることを決議させた。

 

後継者を示唆せず、終身独裁者として4期目もやりそうだ。

 

トウ小平路線を継承してきた元権力者の江沢民や朱鎔基は党大会に呼ばれず欠席になり、胡錦涛は党大会に呼ばれて習近平の隣に座らされたものの、党大会の閉会式で粛清的に強制退場させられる茶番劇の犠牲になった。

 

 

習近平は、制度的にも象徴的にも、トウ小平路線の破壊をこれみよがしにやっている。

 

習近平は、集団指導体制を壊して自分の子分ばかりで上層部を固め、米国との対立を辞さず米英批判を強め、言論の自由を減らし、経済も国家主義を導入して市場主義を制限し、党による規制強化(習近平路線)を批判したアリババのジャック・マーを見せしめとして処分(永久軟禁?)した。

 

 

習近平政権は、経済米国化の一環として発生してきた株価や不動産などの金融バブルを積極的に潰す策もやり続けた。

 

習近平の独裁強化は、政治経済的に米国と仲良くして中国を発展させてきたトウ小平路線に対する破壊活動の一環として進められている。

日米のマスコミ権威筋は、習近平の独裁強化策を「権力欲におぼれた愚挙」と単純化して決めつけ、「独裁は悪だ」という善悪観のみで喧伝している。

 

以前からの中国敵視のプロパガンダの上にそれが載せられ、多くの人が喧伝を軽信している。

 

分析など要らない。

 

だって、独裁は悪いことでしょ。

 

悪人の言い訳なんか聞きたくない。

 

という感じ。

 

プーチン=悪。

 

習近平=悪。

 

中露は必ずや失敗する。

 

悪だから。

 

そういう観点で、ことさらグロテスクに、失敗方向が誇張されて喧伝されている。

 

だが、麻薬中毒的な善悪論をいったん離れ、習近平の独裁強化とトウ小平路線の放棄・破壊をまっとうな戦略として見ると、これが今後の中国を強化・発展させる策かもしれないと思えてくる。

 

米覇権側(米欧日)が、習近平をグロテスクな極悪として描くほど、むしろそれが習近平の策の本質を見えなくさせる目くらましとして機能し、気がついたら米国覇権が崩壊して中国(中露など非米側)が生き残って台頭する多極化になっている、という展開になりそうだ。

 

プーチンだけでなく習近平「偽悪戦略」を採っている可能性がある。 

 

 

習近平は、米覇権体制の傘下で中国を発展させてきたトウ小平路線を捨てる策を進めてきた。

 

なぜか。

 

米国覇権が崩壊しつつある(もしくは、すでに崩壊した)からだ。

 

米覇権の崩壊は、マスコミ権威筋が無視する傾向なので、多くの人々に見えていない。

 

米覇権が今後もずっと隆々と強く、中国(や日本)がその傘下にいれば経済発展し続けられるなら、トウ小平路線(や日本的な積極的対米従属)をやめない方が良い。

 

米覇権が永続するなら、習近平の独裁強化は「権力欲におぼれた愚挙」である。

 

だが逆に、米覇権が崩壊するなら、早く自立して他の路線に移らないと米国と一緒に衰退してしまう。

 

以前から中国は理想主義でなく現実主義だ。

 

党内民主化やリベラル化や自由市場化は、「良いこと」だからでなく、中国を米国傘下で発展させる策だから採用した。 

https://www.straitstimes.com/asia/east-asia/the-sweeping-impact-of-new-us-semiconductor-restrictions

 

米覇権や欧米中心体制の永続を前提にしてきたトウ小平路線と対照的に、習近平の路線は、米覇権が縮小し、米覇権の外部にある非米諸国が相対的に台頭して多極型の世界になることを前提にしている。

 

習近平は、ユーラシアの内陸や西アジア、アフリカ、ロシアなどの非米諸国をつなぐ「一帯一路」の経済圏など、非米諸国との経済関係を強化して中国を発展させていこうとしている。

 

トウ小平から胡錦涛までの時代、中国人の世界観は欧米中心だった。

 

トウ小平路線の人々の多くは今も、米覇権の不可逆的な衰退を見据えていない。

 

習近平が、米覇権の衰退を前提に、欧米と距離を置き、非米諸国との経済関係を主軸にしたがっていることに、トウ小平路線の人々は猛反対してきた。

 

トウ小平路線は40年近く続いてきたので、中国のエリートの多くはそこにどっぷりひたっており、その路線下で蓄財してきたので転向したがらない。

 

習近平が自分の路線を人々に学習させても本質的な理解者は少数で、集団指導体制だと中共中央は守旧派(市場主義派)が大半になり、トウ小平路線から離脱できない。

 

それで習近平は独裁強化に踏み切った。

 

 

トウ小平は自分の後継者として江沢民胡錦涛に10年ずつやれと遺言して死んだが、胡錦涛の任期満了後に誰が権力を継いで何をするかは決めなかった。

 

胡錦涛の後任を習近平に決めたのは江沢民だったようだが、習近平トウ小平路線を継承する義務があったわけではなく、その点で政策決定の自由があった。

 

トウ小平は、米覇権が強い間は米国に逆らうなと遺言していたが、これを裏から読むと、米覇権が崩壊するなら他の戦略を採れという遺言になる。

 

そう考えると、習近平トウ小平路線を放棄・破壊しているのはトウ小平自身の遺言に沿っていることになる。 

 

 

習近平の独裁強化のもう一つの側面は、習近平毛沢東の皮をかぶり、毛沢東を真似て独裁を強化していることだ。

 

毛沢東の時代、(毛の政策失敗が一因で)人々は全員が平等に貧しかった。

 

トウ小平の時代になって人々は豊かになったが、一部の人だけ(汚職や投機を駆使して)ものすごく豊かになり、ほとんどの人々は少ししか豊かになれず、貧富格差と拝金主義がひどくなり、人々の不満が募った。

 

多くの人が感傷的に毛沢東の時の方が平等で良かった」と思った(文化大革命でひどい目にあった人も多いが)。

 

習近平は、トウ小平路線を壊すにあたり、自らを毛沢東の忠実な後継者に見せる策をとり、習近平路線はトウ小平路線の欠点を是正するものだと言って人々の支持を得た。 

 

 

プロパガンダ的な皮かぶりだけでなく、毛沢東習近平の策は似ているところがある。

 

毛沢東は自力更生の経済政策を大胆にやって失敗したが、自力更生とは、米英の先進国から冷戦で敵視されて技術導入ができなくても、自力で技術を構築できるという策だ。

 

毛沢東の時代、中国には技術の蓄積がほとんどなかったので失敗した。

 

そして今、習近平は米覇権崩壊を前提に、米欧に技術を依存せず自力更生で中国(と一帯一路の諸国)の経済を回していく策を採っている。

 

毛沢東の時代は中国に技術がなかったが、その後のトウ小平路線の40年間に中国は米欧日から大量の技術を移植され、今では世界最先端の技術保有国になっている。

 

そして米欧は金融バブル崩壊と対露制裁による資源不足で経済破綻していく。

 

資源の大半は中露側にある。

 

今後の中国は、むしろ自力更生(と非米諸国との連帯)の経済政策をやった方が成功する。

 

毛沢東が成功できなかった自力更生を、習近平が成功させる。

 

中国共産党にとって、これ以上の成功神話はない。 

 

 

習近平は、中国人にショックを与える目的でも毛沢東の皮をかぶっている。

 

毛沢東は、文化大革命紅衛兵人民裁判、粛清などの恐怖政治の暗黒な側面も持っている。

 

習近平は、毛沢東の恐怖政治をあえて再演して見せることで、身勝手な血液B型の中国人たちに「逆らったら怖い目にあう」と動物的に思わせて服従させている。

 

トウ小平路線に固執して習近平に従わない先輩の胡錦涛を議場から強制連行して排除する「粛清」を演じたのは、習近平毛沢東ごっこの一つだ。

 

胡錦涛は犯罪者扱いされず体調不良での退席と発表されており、これは本物の粛清でなく、人々に文革時代を思い出させるための「恐れさせごっこだ。

 

ジャック・マーを行方不明にさせたり、コロナ都市閉鎖策の違反者たちを街頭で引き回して人民裁判的にさらし者にしたのも、習近平毛沢東ごっこだ。

 

習近平は、プーチン同様、米欧に極悪人のレッテルを貼らせ、米欧が中露敵視策をやるほど米欧が自滅して中露が台頭する偽悪戦略を採っている感じだ。

 

ヒットラーと日本帝国は惨敗したが、習近平プーチンは勝ちそうだ。

 

 

習近平はゼロコロナ策をとり続けている。

 

ゼロコロナ策は、コロナ対策としてほとんど効果がない都市閉鎖を断続的に延々と続けることであり、経済を破壊するだけの超愚策だ。

 

コロナ対策として馬鹿げているが、権力者が政敵たちの動きを監視・阻止する策としては有効だ。

 

習近平は、ゼロコロナ策で都市閉鎖を続けることで、トウ小平路線派を監視したり動きを封じるのがやりやすくなっている。

 

習近平は、トウ小平路線派がかなり弱くなるまでゼロコロナ策を続けるだろう。

 

改革派の巣窟っぽい上海市は、今後2年間ゼロコロナ策を続けさせられるそうだ。

 

 

ゼロコロナ策を続けると、中国の経済成長は大幅に減速する。

 

中国共産党が政権を持つ正統性は高度経済成長の維持にあると言われてきた。

 

ゼロコロナによる成長鈍化で習近平は自滅する、と言う人がいそうだ。

 

しかし実のところ、(短期的な)経済成長が政権維持の正統性だというのはトウ小平路線、というか米覇権(欧米)の考え方だ。

 

米国は中国に対し、共産党独裁でもいいからその代わり経済成長して投資家を儲けさせてくれと言っていたのだ。

 

習近平は、これから崩壊する米国の言うことなど聞く必要がない。

 

中国政府は最近、経済成長率の予測値などの重要指標の発表をやめてしまった。

 

予測値を達成できたかどうか教えないよ、というわけだ。

 

そもそもリーマン後、米欧の経済指標もインチキだらけだし、株や債券などの相場もQEで歪曲されており、米欧は中国を批判できる状況にない。

 

今後しばらく、経済成長でなく覇権転換の行方が人類にとって重要だ。 

 

 

 

長期的に経済成長できる体制は、独裁でなく民主主義の政治体制と、国家統制でなく自由市場の経済体制だ、と考える人が欧米と、中国の改革派(トウ小平路線派)に多い。

 

これが本当なら、党内民主主義と自由市場経済を捨てた習近平の中国は経済成長できなくなる。

 

しかし、これは本当なのか??。

 

日本(など先進諸国の)経済は、分割民営化など市場主義を導入した1990年代以降より、それ以前の国家統制があった時代の方が高度成長していた。

 

市場原理の導入は、民営化して株式公開と債券発行させて金融相場を活況にする(相場をつり上げ、投資家を儲けさす)ことが真の目的であり、市場主義の方が成長できるという話は、その目的を達成するための詭弁だ。

 

 

一党独裁と「中国式社会主義」の体制下で、すでに中国は世界有数の研究開発力・発明力を持っている。

 

習近平の中国はもっとすごい発明王国になるとジェフリー・サックスが言っている。 

 

 

 

独裁より民主主義の方が良いという話も、民主主義の国の方が米英諜報界が入り込んで不都合な政権を交代させやすいという、米覇権維持のための話だ。

 

そもそも中国は、人々が実利的・守銭奴すぎるのと、国内が民族的に多様すぎて、民主主義を実践できない体質っぽい。

 

民主化を試みない方が良い。

 

近年は、米国で民主党が選挙不正をやってトランプを追い出したり、EUが加盟諸国の民意の反対を無視して対露制裁とウクライナ支援を続ける超国家の独裁機関になっている。

 

中国より欧米の方がインチキだ。

 

欧米はもう中国を批判できない。

 

今後の世界経済は、欧米が破綻し、投資家が儲けられる先は先進国でなく中露印など非米諸国になる。

 

民主主義や自由市場でないと成長できないという話は雲散霧消するだろう。

 

みんな騙されていたわけだ。 

 

 

中国が米欧に気兼ねしてきた時代、米国に気に入られるためにリベラルごっこ、民主主義ごっこを演じてきた時代は、トウ小平路線とともに終わる。

 

共産党の中国は、明清の中華帝国と似た感じの政体になっていく。

 

経済成長と政治安定を得られるならそれで良い、という話になる。

 

冊封体制との関係など、今回の話はまだまだ書きたいことがあるが、とりあえずここまでで配信し、改めて書く。

 

 

 

西側の権威とも言えるケンブリッジ大学の調査で次のような結果が出ました。

 

「いわゆる民主主義国家」の75%は中国嫌い、87%がロシア嫌い。

 

「その他の国」の70%は中国好き、66%がロシア好き。

 

さて「いわゆる民主主義国家」の人口は12億人、「その他の国」の人口は63億人。

 

よってケンブリッジ大学の結論は「世界は中国好き、ロシア好き」となりました。
 

日本のメディアお決まりのフレーズ「日本を含む国際社会」は、今や世界の片隅です。