<福島第1原発事故>裁判外解決手続き 賠償一律半額に
毎日新聞 7月9日(水)7時30分配信
◇「迅速な処理を優先した」被災者救済置き去り
センター側は、中には満額支払うべきケースもあったが「迅速な処理を優先した」と説明しており、被災者の救済が置き去りにされている実態が浮かんだ。
【高島博之、関谷俊介】
【3000人、なぜ力尽き】震災なければ、延命できた
被災者と東電の双方に提示し、両者が受け入れれば和解が成立する。
約260人いる仲介委員はそれぞれ独立しているが、複数の関係者によると、個々のケースでばらつきが生じないよう、仲介室と相談して和解案の内容を決めることが多い。
野山氏の説明によると、原発事故翌年の2012年前半、一部の「有力な仲介委員」(野山氏)をセンターに集め、「死亡慰謝料に関しては、十分な証拠調べをしていない点を考慮し、寄与度を大体50%としよう」と提案し了承を得た。
センターがホームページで公表している和解成立案件のうち、死亡慰謝料に関するものは26件。
このうち、寄与度が記載されている11件のうち10件は50%で、金額は700万~900万円だった(残る1件は90%、1620万円)。
また、11件以外に、毎日新聞が遺族に取材して確認した事例でも、センター側は死亡による慰謝料を1800万円と算定したうえで、「寄与度は50%」として東電の支払額を900万円とする和解案を示していた(和解成立)。
野山氏は「本当は寄与度が100%認められる事例もあるが、とりあえず(和解案では)50%と出す。
丁寧に審理したら、とても今の期間(1件につき平均約6カ月)が維持できない」と迅速化が背景にあると説明した。
「批判はあるかもしれないが、こういうやり方が限界。不満ならば裁判をやってください」
と主張した。
ところが、50%ルールに関する記載はなく非公表だ。
センターは取材に対し「50%は目安であり(仲介委員を拘束する)基準ではないため、公表する必要はない」としている。
東京電力広報部は「寄与度について回答する立場にないが、仲介委員が各事案の個別事情を踏まえ、提案されているものと理解している」としている。
◇ことば【寄与度】
事故や事件による被害に対して、加害者の行為だけではなく、持病など被害者がもともと持っていた要因も結果に影響した場合、被害全体に占めるそれぞれの要因の割合。
この考え方に基づく司法判断や和解を「割合的認定」や「割合的解決」と呼ぶこともある。