「1536」現下の政治状況を勢力分析する。大阪都構想の住民投票に現れた、若い世代のファシズムへの欲求。それを支える橋下徹・菅義偉の背後にある勢力とは。安倍・菅の野党分断の動きに対し、維新の党の執行部をおさえた旧小沢グループが巻き返しにでている。
http://www.snsi.jp/tops/kouhou
http://www.snsi.jp/tops/kouhou
(抜粋)
しかし、カジノ合法化法案は連立与党の一角を担う公明党が反対姿勢を崩していない。
この舛添が都知事になったので、東京都のカジノ構想は立ち消えになり、変わって首都圏のカジノ候補地として浮上したのが、横浜・山下埠頭である。
東京はオリンピックで開発が決まっているので、大阪と横浜ではカジノを建設させろということになったのだろう。
ここに橋下市長と菅官房長官の同盟関係の鍵としてカジノというキーワードが浮かび上がってくる。
横浜は早い話が港町であり、山下埠頭やみなとみらい地区は物流の拠点である。
港町といえば神戸のように沖仲仕(おきなかし)と呼ばれる港湾労働者の元締めである有力者が必ず存在する。
こういった港町では港湾労働者の元締めがやがて政治の世界にも影響を持つようになる。
横浜においては、藤木幸太郎という有力者がおり、この人物が田岡一雄と「全国湾荷役振興協議会」を設立している。
この藤木幸太郎の息子が現在、
横浜港運協会会長のほかに、
社団法人日本港運協会副会長、
財団法人横浜港湾福利厚生協会会長
として活躍している藤木幸夫という財界人である。
去年の秋ころから今年の春にかけて、藤木幸夫という財界人について、菅義偉のタニマチであるという記事がいくつかの雑誌に出た。
雑誌『選択」の2014年10月号では「土着権力の研究」という連載で、藤木幸夫について特集記事を掲載している。
それによれば、中田宏(次世代の党に移籍したが今は離党)の後継者である林文子(はやしふみこ)横浜市長の後援会長を務めるほか、横浜ベイスターズのホーム球場でる横浜スタジアムの取締役会長を務めていると書いてある。
記事によると、藤木はかつて横浜から選出されていた小此木三郎(おこのぎさぶろう、故人)元建設大臣と昵懇だったという。
この小此木の秘書をしていたのが若き日の菅義偉である。
藤木はFMヨコハマの社長でもあり、産業、港湾、メディア、娯楽までに幅広い影響力を持つ「ヨコハマのドン」のような存在であるようだ。
なお、藤木はマット安川(横浜出身のタレントであるミッキー安川の息子)が司会を務める右翼的な論調のラジオ番組によく出演していたこともある。
この番組には安倍首相も以前出演していた。
(ニュースサイトのJBpressに内容が転載されている)
藤木はカジノ構想とともに、横浜スタジアムを立て替えて、横浜ドームを建設する計画にも参画しているようで、カジノ構想とドーム構想は連動している。
カジノ開発というのは巨大なマネーが動く娯楽施設であり、運営開始後もマネーが出入りすることになる。
それ自体が巨大な利権になる。
大阪市解体により新しく5つの区を設置するという話は、早い話が巨大開発計画であり、海側の区に娯楽施設としての特区でのカジノも建設しようという話だったのだろう。
このように、菅と橋下はカジノ誘致をした自治体の政治家ということでも繋がっている共通点があり、逆に言えば二人は運命を共にしているということになる。
大阪のカジノ構想が残っている限り、菅と繋がっている橋下・松井のラインも失脚してもらっては困るということになるので、官邸サイドはいずれ橋下の復権の仕掛けを考え出すだろう。
菅は沖縄の基地問題にも首を突っ込んでいるが、これなどもいずれは沖縄のリゾート地にカジノを建設することを見越して、そのカジノに影響力を持ちたいという思惑があるのかもしれない。
今年初めに、菅義偉をモデルにした小説である元公安警察の小説家が書いた『内閣官房長官・小山内和博 電光石火』(濱嘉之・著、文春文庫)という本が出て、これを政治ジャーナリストの歳川隆雄氏が紹介していたので読んでみたが、この小説は完全な実名小説で、事実関係も一部を除けば全て事実に即している。
石破茂をモデルにした政治家が女性問題で潰されていくことも書かれているが、空恐ろしい内容だ。
官邸のマスメディアをつかった情報コントロールとはこういうことだろう。
公明党と維新は古い利権と新しい利権の権力闘争(特別区全体で見た「総数」では議席数は同じだが、以後特別区での議員定数削減は区議会で可能ということも含めて権力闘争)をしていたのであり、この権力闘争に勝利すべく、橋下徹市長は、大阪都構想をという大きな夢を語り「グレートリセット(一種の構造改革)」の実現を企図してきたのだろう。
これを東シナ海や南シナ海で中国との安全保障上の緊張関係で生まれた時に実行する場合、自民党安倍政権と維新の橋下徹の系統が外の今日に向けて大きく団結し、それに民主党も引きずられていく(民主党の中には自民党以上にタカ派の政治家もいる)という状況も起こりうる。
こうなってくると、一種のファシズム状態であり、すべては国防に寄与するという目的で動員されていくことになる。
古村治彦研究員から聞いた話だが、戦前にも「第三極」の政党が躍進し、それが1930年代に日本全体がファッショ化するなかで従来の政友会・民政党のような金持ち政党に引きずられる形で大政翼賛会に吸収されていったことがあるという。
それが、改革の断行を訴えて選挙を戦い、やがて国際情勢の変化とともにファッショ化していくという社会大衆党の歩んだ道はどこか似ている。
二大政党が支配している利権を分配するので、大衆も国防に協力せよという主張が「広義国防論」だろう。
そして、日米豪ないしは日本とフィリピンやベトナム共同で訓練または警戒中に中国海軍と対峙することになっていくのだろう。
橋下が国政に進出してきたりした場合、
彼は石原慎太郎の後継者として、
対中戦略という国防論の文脈で国内が再編されていくのは非常に恐ろしいことである。
安保法制が滞りなく通過し、安倍晋三が9月の総裁選で再選された後は、日本の政界についてはこの点に注意すべきでる。
そんな中、安倍首相がサミットで欧州にいる時に、谷垣禎一幹事長は党内リベラルの看板をかなぐり捨てたように、安倍政権の安保法制を支持する街頭演説会を都内数カ所で開催したが、街頭からの強烈な「帰れ」コールを浴びている。
ただ、安保法制も6月のサミット前後から、少し雲行きが怪しくなってきたということも言わなければならない。
今の状態では自民党が国民の反発を株高と円安で押し切って行くとみられる。
ここに「正気」を取り戻した谷垣幹事長が合流すれば、安倍政権は一気にグラつく。
それに一応は期待したい。
しかし、一方で派遣法と同様に官邸サイドが維新の抱き込みをはじめているのではないかという記事が「西日本新聞」に出ているのが気になる。
官邸サイドの菅義偉と、谷垣派の国対委員長のベテランの栃木の政治家である佐藤勉(さとうつとむ)が、一緒になって強行採決のタイミングを探りなら、維新の沖縄選出の衆議院議員の下地幹郎(衆議院の安保法制特別委員会の維新側の理事)を抱き込もうとしている。
菅が手がけてきた沖縄工作がここでも効いてくるかもしれない。
自民党は安倍首相のようなタカ派とそれ以外の従来は「保守本流」と言われた宏池会系が絶妙なバランスを撮ってきたが、小選挙区制の導入から党総裁の権限が強まり、派閥政治が形骸化してしまって、極端な右側に振れることが大きくなった。
その最たる例が清和会の主要な政治家がが安倍政権や今の自民党の中枢にいることだ。
日本における台湾独立派の代理人である金美齢(きんびれい)の事務所で開かれたパーティには、安倍晋三が後継者と目する稲田朋美政調会長や、小泉進次郎とは違う系統で右がかった今の青年局長の松本洋平という若手政治家が写っていた。
更に、首相の国家安全保障担当首席補佐官を務める礒崎陽輔(いそざきようすけ)参議院議員は、元総務官僚であるが、東大卒業のくせに、以前、立憲主義について何も知らないことをツイッター上で公言していたが、最近、10代の若い女子とツイッター上で論争してみっともない姿を晒していた。
また、安倍首相は「フェイスブック依存症」ではないかと言われるが、安倍首相のフェイスブックの投稿を代行して書いていたのが実は、山本一太参議院議員であったことも、本人が「投稿ミス」をしたことで発覚してしまった。
日本の保守派にとっては、本当に憂うべき事態であるが、
また、統一教会系とは違うが、著名人の霊言と称して独自の言論活動を行い、「米共和党系の人脈を持つ」ともいわれる新興宗教団体「ハッピー・サイエンス」系の政治活動家たちは、米在日海兵隊の元幹部であるロバート・エルドリッジという人物を取り込んで、沖縄での政治活動を活発化させている。
さらに言えば、前には雑誌「ファクタ」で、この宗教団体が、維新の会に潜り込んでいるのではないかという疑念を抱く公明党が不快感を抱いている、という穏やかではな記事を掲載したこともある。
実際はよくわからないのだが、今回の都構想を巡っても都構想に積極的な維新の会議員がこの団体との関係をネットで噂として取り沙汰されていた。
この記事を見ると、原発問題の国論の二分を利用している面も見られる。
(http://facta.co.jp/article/201305031002.html http://dailycult.blogspot.jp/2014/02/blog-post_5.html )
この状況を分析すれば、一般大衆の思惑とは無縁なところで、宗教右派と左派リベラルの対立が不用意に意図的に煽り立てられている、ということになるわけだ。
これもかつての米ソ冷戦時代を彷彿とさせる。
その中で米中の対立が起きれば、その矢面に真っ先に立たされることも想定できる。
そんな中、安倍政権が頼れるのは「維新の大阪系」になる。
維新の党は、与党系と野党系の「どまんなか」にいる。
都構想否決後の維新のトップである、松野代表の対応が日本のデモクラシーの運命を決めると言ってもいいだろう。
そして、自民党のリベラル勢力は自分たちの本来の役割を果たしてほしいものだ。
そろそろバカ殿安倍晋三に対する「主君押込め」を実行に移すときだからだ。(敬称略)