きなこのブログ

大失業時代が到来しています。大失業の恐ろしさを歴史から学ばなければならない。『大失業は戦争への道につながっている』

介護業界のヤバい現実 3 ~中抜き出来ないものは放置する国~

 

「ただ働き」制度改革訴え 訪問介護ヘルパー国賠訴訟、来月判決 介護保険の問題点「可視化」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/208963

訪問介護ヘルパーが低賃金で労働条件も劣悪なのは介護保険制度に原因がある」−。

 

三人の女性ヘルパーが国を相手に起こした国家賠償訴訟の判決が、十一月一日に言い渡される。

 

訪問介護の現場は極度の人手不足で事業者の倒産も相次ぐ

 

「制度改革に本気で取り組まないと、このままではヘルパーがいなくなる」。

 

原告の思いは司法に届くのか。 (五十住和樹)
 

「ヘルパーが利用者宅を回る移動や待機時間は無給で、国はその責任を事業者にかぶせてきた」

 

介護保険制度は労働基準法を守れる仕組みになっていない」
 

八月に東京地裁であった第八回口頭弁論で、三人の女性は口々に訴えた。

 

これらの主張を補うため原告側は証人尋問を求めたが、高木勝己裁判長は却下して結審。

 

傍聴席が騒然となる中で閉廷した。
 

この裁判は二〇一九年十一月、東京都品川区の藤原るかさん(66)、同三鷹市伊藤みどりさん(70)、福島県郡山市の佐藤昌子さん(67)の三人が起こした。
 

訴えによると、訪問介護を担う大半の登録ヘルパーは、実際にサービスを提供した時間しか賃金が支払われない。

 

移動や待機時間はほぼ無給で、利用者が突然キャンセルした時の休業手当も出ない。

 

こうした労働基準法違反の状態を国が放置し、規制権限を行使しなかったのは違法だとし、介護労働者としての尊厳を傷つけられる働き方を強いられたと訴え、移動時間などの未払い賃金も含め、原告一人に三百三十万円を支払うよう求めている。


国側は「未払い賃金の支払いは事業者の義務。原告は介護保険制度への不満を述べているだけだ」と反論した。
 

厚生労働省は、移動や待機時間などは労働時間として賃金を払うよう事業者を指導している。

 

原告側は、これらの時間に事業者が給与を払えるだけの介護報酬を国は設定していないと訴えたが、国側は報酬の算定の根拠も含めて答えないまま。

 

ヘルパーの労働実態について「調査していない。今後もしない」と答えた。
 

「私が働いた二十年間の移動や待機時間などを計算すると、労働時間の五分の一にあたる約四年間は、ただ働き。この働き方を変えないとヘルパーは定着しない」と藤原さん。

 

伊藤さんは「(制度改正で)ケアの時間が細切れにされて十分な介護ができず、やりがいも奪われた。このままだと膨大な介護難民が生まれる」と訴え、佐藤さんも「施設にも入れず、在宅を望んでもヘルパー不足で訪問介護は受けられない。これが現実になった」と憂えた。
 

三人は昨年九月の陳述書などで、それぞれ自らの介護労働を詳しく述べ「若者が選ぶ価値のある職業にしなければヘルパーは消滅する」と、訪問介護の持続性を問う裁判だと強調した。
 

公益財団法人「介護労働安定センター」の二〇二一年度の調べでは、訪問介護事業所の80・6%がヘルパー不足と回答。

 

二〇年度の有効求人倍率は14・92倍で、ヘルパーを奪い合う状況が続く。

 

ヘルパーの高齢化も深刻で平均年齢は五四・四歳、六十歳以上が37・6%に。原告団の二〇年夏の調査では、回答したヘルパーの58%が「やめたいと思ったことがある」とした。


原告側代理人の山本志都(しづ)弁護士(55)は「ヘルパー個人が国を訴えた裁判は初めてで、介護保険制度のさまざまな問題点を可視化できた」と意義を語る。


労働問題に詳しい脇田滋龍谷大名誉教授(74)は介護保険制度自体が、ヘルパーの労働条件などで国が公的責任を免れることができる仕組みになっている。ケアそのものの大切さを問う裁判だ」と話している。