安倍晋三政権が、TPPの交渉参加に向けて暴走している。
TPP(環太平洋戦略連携協定)とは、英語でTrans Pacific Strategic Partnershipと言う。
しかし、場合によっては、Trans Pacific Partnership Agreement(TPPA)とも表記するものもある。
ここで重要なのは、TPPがアグリーメントという条約一歩手前の協定というものであることだ。
実は、日米関係だけではないが、日本の国内政治は、そのような各種のアグリーメントによって制約を受けている。
日本国憲法においては、98条第2項に
「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」
と書いてある。
だから、憲法以外の国内法は条約などの下に存在する。
日本国が締結した条約に違反する法律というものは存在しないという解釈になっているようだ。
だから、日本がTPPに参加するかどうかということは重大な問題になる。
TPPにはISDS(投資家―国家紛争裁定手続き)という条項がある。
アメリカは韓国とFTAを近年結び、これは両国の国会で昨年に批准されて発効しているが、この中では米国法は、米韓FTAの取り決めに優先するが、韓国国内法は米韓FTAに拘束されるという不平等条項が存在している。
仮に条約の一種であるTPPを国会が批准すれば、米国法はTPPに束縛を受けないが、他の参加国の国内法はTPPに束縛されるという実態が生まれないという保障はない。
だから、国内法で議論できるはずの農業の自由化(関税の撤廃や縮小はTPPでなくともできる)とか、規制緩和というものを国際条約であるTPPに結びつけることに本来何の合理性もない。
あるのはTPPによって利益を得る米国を中心とする多国籍企業の合理的選択である。
この二つの協定は外交安保・エネルギー政策を考える上で極めて重要なものである。
日米原子力協定についてはいずれ他の本の書評をする際に触れたいが、要するにこの協定が現在の形になっているために、日本は使用済み核燃料の再処理をしなければ、アメリカから睨まれるという事になっているのである。
だから、日本国内でいかに原子力政策を議論しようとしても、この協定があるために、何も変わらないのだ。
同じように、日米地位協定というものが、日米の不平等の根底にある。
この地位協定は、英語では、U.S. - Japan Status of Forces Agreement、SOFAと表記する。
正式名称は、
「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」
となっている。