機械が作り出した、人間そっくりのロボット、ターミネーター。
人間を殺すことだけがプログラムされているのです。
いくら破壊しても、たとえ部品―つになったとしても、動くかぎり人間を殺そうとする姿に、恐ろしさとショックを受けたと思います。
現在、世界の株式市場はひどい暴落となり、ほとんどの投資家は天文額的な損失を抱えるに至っていますが、この焼け野原の株式市場を、のっそのっそと我が物顔に闊歩している存在がある。
CTA(コモデティー・トレーディング・アドバイザーズ=商品投資顧問業者)、別名マネージド・フューチャーズと呼ばれるヘッジファンドです。
株式市場には、一般的な株式の取引と、先物取引(日経平均やトピックスといった指数を売買する)やオプション取引(指数に絡む権利売買)というデリバティブ取引があります。
普通の株の売買であれば、一般の人にもわかりやすいでしょうが、デリバティブ取引は、かなり複雑で、一般の人達は近寄り難いものです。
ですからこのデリバティブ取引は、主にセミプロやプロの市場と言っていいでしょう。
CTAは、このデリバティブ市場を専門とする、先物、オプション専門のヘッジファンドです。
今、数多くというよりほとんどのヘッジファンドは大きな損失を抱え、解約ラッシュで悲鳴を上げていますが、CTAだけは、涼しい顔で、毎日のように株式市場で暴れています。
普通の人は、株式市場は、その株の業績の推移で動くものと思っていると思います。
しかし、もう一つ、先物市場に絡む動きが常に存在しているのです。
というのも、先物というのは、まさに先の物、すなわち、先行きの値段を売買しているに過ぎません。
たとえば、トヨタは1円の円高で、400億円の損失を蒙(こうむ)りますが、それを阻止しようとして、先物の為替を売ったり、買ったりして利益を確定するのです。
この先の物が動けば、将来、高いとか安いとかという値段がついているわけですから、当然、それが巡り巡って今の相場の値段に影響を与えるわけです。
しかも、その額が巨大だったらどうでしょうか?
たとえば現在、為替相揚が1ドル100円で売買されているときに、トヨタをはじめとする自動車会社が円を買って、3ヵ月後の円を90円で売り買いしていたらどうでしょう?
3ヵ月後が90円なら、「今の100円は円高に動きそうだ」と100円の現在の相場に、円高の圧力がかかりませんか?
円を買いたくなりませんか?
もしくは、もっと積極的に、「8ヵ月後の90円と現在の100円の差額を儲けることはできないか」と考えるかもしれません。
このように先物の取引は、現在から1ヵ月や2ヵ月、3ヵ月先の値段の取引であって、当然跳ね返って現在の市場に影響を与えるのです。
そしてこの先物や現在の現物市場の値段、もっと複雑に言えば、オプション取引などという手法を使うとさらに巧みに賭け口が広がるのです。
実はこの先物、オプション、現物などといった取引を混ぜ合わせて、確実に儲かるであろう均衡点を見つけ出そうというのが、いわゆる「金融工学」というシロモノなのです。
この金融工学に基づいて、世界の巨大金融機関は例外なく、様々なものに投資してきたのです。
しかし今、人間の行う相場は、機械とは違う、まさに歴史にない動きを始めてしまいました。
そのため、金融工学に守られ、完璧だと思っていた投資がすべて、想定外の巨大な損失となって、世界中に襲いかかってきているのです。
とはいえなんと、まだしっかりと生き延びていて、利益をたたき出しているものがあったのです。
それが、ヘッジファンドです。
CTA、すなわちコモデティー・トレーディング・アドバイザーズはなんと、ほとんどが“ロボットによるトレーディング”を行っています。
人間様が青くなっているのに、一人勝ち、株式市場で、毎日のように暴れています。
かくして人間様は機械にすべてのお金を巻き上げられ、一文無しになって、お互いが争って自滅に向かうという、<ターミネーター>の映画とは少し違いますが、同じ結果になろうとしているのです。