きなこのブログ

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多極化(米覇権崩壊)11 ~米英支配から自立へ

中露が誘う中東の非米化
https://tanakanews.com/221221Saudi.htm

12月7日、中国の習近平主席が6年ぶりにサウジアラビアを訪問した。

 

同時期にサウジにアラブ諸国など30か国の首脳らも集まり、初の「中国アラブサミット」が開かれた。

 

権力者のMbS皇太子らサウジ王政は習近平を大歓迎し、今年7月に米国のバイデン大統領のサウジ訪問の時よりはるかに大規模な歓迎式典がおこなわれた。

 

中国とサウジは、経済金融や科学技術、エネルギー、製造業などの関係強化を決めた。 

 

 

 

笑えるのは、両国が結んだ協定の一つが、地球温暖化対策での協力関係の強化だったことだ。

 

11月にエジプトで開かれたCOP27では、中国とサウジが協力して、石油ガスの利用制限などの「温暖化対策」の世界的な義務づけを後退させた。

 

義務づけを強化したい欧米はCOP27で中国サウジと対立したが負けてしまった。

 

実のところ、欧米が言っている地球の急激な温暖化はウソであり、気候は大して変動していないし、変動の主因も石油ガス利用などの人為でなく太陽活動の変化だ。

 

だから温暖化対策などやらなくて良いのだが、中国とサウジは世界的な主導権を保持するため、表向き協力して温暖化対策を進めるふりをしつつ、世界の温暖化対策を後退させている。

 

中国サウジの「やるふり」が、習近平訪問時に温暖化対策の協力関係強化を決めたことに表れている。 

 

 

サウジは中国との関係を強化する一方で、これまで事実上の「宗主国」だった米国との関係を疎遠にしている。

 

米国とサウジの関係は、2018年にMbS皇太子が部下たちに命じて反体制ジャーナリストだったジャマル・カショギをトルコで殺させた事件で大幅に悪化し、米国にとってサウジは同盟国から制裁対象に事実上転換した。

 

MbSのサウジは米国の言うことを聞かない傾向を強め、今年10月にはサウジが主導するOPECが米国の反対を押し切って石油の減産を決めた。

 

対抗して米国側は、OPEC独禁法違反の違法組織と認定する決議案が議会上院で検討開始(再開)されたり、米軍がサウジを守ってやるために配備しているパトリオット迎撃ミサイルをウクライナに動かすことを検討したりしている。

 

 

10月末には、MbS「バイデンは認知症だ」と揶揄し、11月にサウジが開いた年次の「砂漠のダボス会議」には、昨年まで呼ばれていた米政府が招待されなかった。

 

今年2月のウクライナ開戦以降、ロシアと中国は、資源保有諸国との関係を強化して、世界の資源利権を米欧から引き剥がして非米反米的な中露側に集め、米欧の弱体化や米覇権の破壊を進めている。

 

サウジは、米欧と付き合わなくても、非米側の諸国に石油を売れるし、米国の代わりにロシアなどから兵器を買えるようになっている。

 

米国がサウジに言うことを聞かせようとしてもMbSは応じず、むしろ米国の傀儡であり続けることを嫌がって、中露非米側との関係を強化して対米自立を進めている。

 

米国とサウジの関係が悪化し、習近平がサウジを訪問して大歓迎されて当然の状況になっている。

 


中国とサウジは今回、これまで中東の覇権国だった米国に配慮して、軍事安保部門の協定を結ばなかった。

 

これだけ見ると、米国の中東覇権が依然として強いので中国とサウジは軍事協定を大々的に結べず、経済や科学技術や温暖化対策(笑)の協定しか結べないのだ、と解釈されかねない。

 

だが現実は逆で、中国とサウジは、米国の中東覇権の不可逆的な低下を米国側に感じさせないよう軍事協定を公式化せず、孫子の兵法」に沿って非公式なままにしている。 

 

 

習近平に先立って10月には中国と同じBRICSに加盟する南アフリカからラマポーザ大統領がサウジを訪問した。

 

ラマポーザと会ったMbSは、サウジとしてBRICSに加盟したいとの希望を表明した。

 

イランやアルゼンチンもBRICSに加盟したがっているのだから、世界的な国家の重要性から考えて、アラブとイスラム世界と産油諸国という三重の盟主であるサウジがBRICSに入るのは不思議でない。

 

習近平のサウジ訪問の目的の一つは、BRICSの事実上の盟主である中国として、サウジのBRICS加盟についての話をMbSと詰めることだったと考えられる。 

 

 

サウジはBRICS加盟するにふさわしい格の国家だが、加盟に際して大きな問題がある。

 

サウジはこれまで安保経済など広範な分野で強い対米従属の状態であり、サウジが得た機密情報はすべて米国に筒抜けである。

 

このままの状態でサウジがBRICSに加盟すると、BRICS内部の秘密の話し合いの内容を米国が知ってしまう。

 

BRICSは中露が主導する非米諸大国の組織で、多極化する今の世界において、米国覇権に対抗する存在だ。

 

中露はBRICSを使って世界の多極化と非米化を進め、米覇権を壊そうとしている。

 

米国は中露への敵視を強めるだけでなく、米覇権にとって脅威となるBRICSを潰したい。

 

サウジがBRICSに入り、米国がサウジ経由でBRICSの秘密の策略や内部の話し合いの内容を把握すると、それはBRICSと中露にとって危険なことになる。 

 

 

世界は今後さらに米覇権の崩壊が進み、中露など非米諸国が台頭するのが必至なので、サウジは対米従属をやめてBRICSに入り、非米側に転向したい。

 

だがサウジがBRICSに入るには、米国との安保上の関係を完全に切らねばならない。

 

サウジの上層部には米諜報界の傀儡者(スパイ)がたくさんおり、米国との安保関係を完全に切るのは時間がかかる。

 

MbSらサウジ王政は最近、急速に米国から距離をおいている。

 

だが、それで十分なのか。

 

サウジをBRICSに入れてしまって大丈夫なのか。

 

習近平はそれを探りにサウジに行った感じだ。

 

その点ではサウジよりも、米国に敵視されてきたイランの方がBRICS加盟にふさわしい。

 

国家の格で見た場合は別だが。 

https://www.middleeasteye.net/news/war-words-escalates-between-us-and-saudi-arabia-over-opec-cut

 

サウジがBRICSに加盟するなら、その前にイランやシリアとの和解も義務づけられる。

 

イランは上海協力機構に入り、中露と仲が良い。

 

シリアのアサド政権はロシアに守られて米国による政権転覆を免れた。

 

これまで対米従属だったサウジは、米国に求められるままイランやシリアを敵視してきたが、BRICSに入るならすべての態度を転換せねばならない。 

 

 

中東諸国の国境線や国家体制の多くは、英国によって第1次大戦後に作られた。

 

英国は、それまで中東を支配していたオスマン・トルコ帝国を大戦で倒し、その領土を分割して英傀儡の新興諸国を作った。

 

英国にとって必要性が低いシリアとレバノン「サイクスピコ条約の交渉で負けた」という歪曲のシナリオを作ってフランスに与え、中東分割を固定した。

 

フランスは英国の都合で「おこぼれ」をもらっただけで、シリアの運営にも消極的でうまくやれなかった。

 

中東諸国の多くは、英国の差し金で作られ、しばらくは英国の植民地だったので、独立後も英国から隠然と支配され続ける傀儡諸国だった。

 

英国はその後、第2次大戦での敗北回避のため、米国に参戦してもらう見返りに覇権を譲渡した。

 

中東(など世界)の覇権国は英国から米国に交替した(英国は、覇権譲渡後の米諜報界を乗っ取って傀儡化し、英国好みの覇権体制にねじ曲げるために冷戦を起こした)。 

 

 

サウジなど中東諸国はこの百年ほど、独立は名ばかりで、ずっと英米に支配されてきた。

 

だからサウジが対米自立するのは簡単でない。

 

しかし同時にこの四半世紀、911からイラク戦争やシリア政権転覆の失敗、リーマン危機、コロナや地球温暖化での自滅策に至るまで、米国の覇権はどんどん弱体化している。

 

今年初めのウクライナ開戦後、米英欧は超愚策な対露制裁で資源面での自滅を強め、米覇権の崩壊が加速して世界支配どころでなくなり、サウジが対米自立できる機運が強まっている。

 

意外に早くサウジはBRICSに入れるかも知れない。

 

中東は百年ぶりに米英欧の支配から脱して自立していく。

 

 

米国が衰退して中国が台頭すると、世界が「米国覇権」から「中国覇権」に転換し、これまで対米従属だった中東(や日本)などは、自立できるのでなく「対中従属」に移行するだけでないか、と思う人がいるかもしれない。

 

「支配されたがり屋」になり下がった戦後の卑屈な日本人はそう思いかねない。

 

だが、英米が中東(やアジア、アフリカなど)を分割して新興諸国の国境線や国家体制を作ったので独立後も支配し続けられたのに比べ、中国はすでに国家としてできあがった中東(やアジアアフリカ)諸国とつき合っているため、英米に比べて支配力が大幅に低い。

 

英米が衰退して支配力を喪失すると、中東やアジアアフリカ諸国は、どこの国からも支配されない自立した国に、ようやくなれる。 

 

 

中東アジアアフリカ諸国は、旧宗主国である米英欧との関係において絶対的に弱かったが、中国との関係はほぼ対等だ。

 

アジアアフリカの貧しい国は、中国よりも経済力がずっと弱いので中国の方が強いが、その手の経済面の優劣の関係性は、日本とアジアアフリカの貧しい国との関係にもあてはまる。

 

これまでの米英の支配力は強かったが、これからの中国の支配力は強くない(少なくとも今後の数十年間)。

 

米英中心のG7は米英の傀儡国の集まりだが、対照的に、中露中心のBRICSは自立的な大国の集まりだ。

 

支配される関係は「悪」であり、相互に自立した対等な関係が「善」である。

 

世界は今後、米英覇権体制から多極型に転換していくほど「良い」状況になる。

 

マスコミは、多極化で世界が混乱し戦争になると予測したがるが、それは米英傀儡組織であるマスコミのウソであり、そんなものを信じるのは間違っている。

 

多極化した方が世界は良くなる。

 


英国など欧州が産業革命と国民革命によって19世紀に強くなるまで、欧州より中東の方が強大で先進的な地域だった。

 

20世紀の戦争と植民地化によって、欧州は中東を支配し弱体化させた。

 

近年の米英欧の自滅と、中東の自立・非米化により、今後は再び中東が強くなるかもしれない。

 

中東諸国は近年、中国やロシアと接近して相互協力の関係を強化しているが、米欧の世界支配を破壊したい中露に後押しされた中東が再び欧州をしのぐ勢力になる可能性がある。

 

その流れを示唆する習近平のサウジ訪問や、サウジのBRICS加盟の動きは、米欧とくに中東の隣にある欧州にとって脅威だ。 

 

 

習近平の中国は最近、中東との関係強化に積極的だが、その前にはアフリカとの関係強化に積極的だった。

 

なぜアフリカが先だったかというと、アフリカは中東と違って過去に欧州をしのぐ強大・先進的な勢力だったことがなく、アフリカが中国のテコ入れで発展したとしても欧米の脅威になる可能性が中東より低いからだ。

 

欧米は戦後ずっとアフリカに関してきたが、アフリカはほとんど成長できず、中国がやってもどうせ成功しないだろうという読みもあり、欧米は中国のアフリカとの関係強化を(誹謗中傷しつつ)容認してきた。

 

実のところ、欧米の戦後のアフリカ政策は、アフリカを潰れた状態にしておく(世界の新興地域の発展を阻止して欧米の優位を守る)ための策であり、だからアフリカ(や中東)は発展できなかった。

 

対照的に中国は、アフリカを発展させて中国の儲けを増やす策を展開としており、かなり成功している。

 

アフリカにとって、欧米より中国に関係強化してもらった方がはるかに良い。

 

中東も同様だ。

 


これまでの中東において、サウジなどアラブ諸国やイラン、トルコは、米英欧から支配され発展を阻害される傾向だった。

 

対照的にイスラエルは、米英欧を脅してゆすりたかりをやったり、上層部・諜報界に入り込んで米英欧の政策をイスラエル好みの方向にねじ曲げて力を延ばしてきた。

 

イスラエルは米覇権を使って自国を強化してきたが、他の中東諸国(イスラム諸国)は米覇権の傀儡にされて弱いままだった。

 

今後、米英欧は支配力と覇権が低下し続けるのが必至なので、イスラエルは神通力を失って弱くなり、イスラム諸国は米英のくびきから解放されて強くなる。

 

イスラエルは、衰退する米欧からの協力を期待できなくなり、代わりに中露のちからを借りざるを得なくなっている。

 

 

 

米欧は、イスラエルに恫喝されてイランやシリアに濡れ衣をかけて敵視し、イスラエルパレスチナ人を弾圧することも容認してきた。

 

だが中露は、イスラエルに協力する見返りとして、イスラエルがイランやシリアを敵視するのをやめることを求め、パレスチナ問題もイスラエルの自発的な解決策の推進を求めるだろう。

 

習近平はサウジ訪問時に、1967年の境界線を国境としてエルサレムを首都とするパレスチナ国家の設立を支持すると表明した。

(双方が自主的な土地交換をすれば、現存するトランプやオルメルトの案でもこれが実現できるが) 

 

 


イスラエルは、米欧を(誇張歪曲された)ホロコースト問題などで脅せたが、中露を脅す方法を(少なくとも今のところ)持っていない。

 

イスラエルが周辺と敵対したままだと、中露など非米諸国から隠然と冷淡にされていき、干されて弱体化してじり貧になっていく。

 

ヨルダン川西岸のパレスチナ人の土地を没収していく策を掲げたユダヤ教右派勢力に頼ってイスラエルの権力を再獲得したネタニヤフ首相が、この難問にどう対応するか注目だ。

 

ユダヤ人らしい奇策が出てくると期待される。(笑、かな?)